倒れそうだが倒れない、クレーン車を支える安全装置あれこれ

ブームを延ばせば、まるでキリンを思わせるような形になるクレーン車。ワイヤーを使って重い荷物を軽々と吊り上げてくれるから、建設現場などでは欠かせない車両として重宝されている。その種類は非常に多く、トラックのキャビンの後ろに搭載されたコンパクトなものもあれば、ビル建設に活躍する大型のものまで実に多種多様なのだ。

毎日多くのクレーン車があちらこちらの現場で活躍しているのだが、素人目に見ると長く伸ばしたブームの先に重い荷物がぶら下がっていると、バランスを崩して倒れてしまわないか心配になる。しかし、クレーン車にはそういった事故を未然に防ぐための装置が、多数用意されているのだ。

まず、荷物を吊るためのワイヤーに関係する部分には、クレーンにかかる負荷が過大でないか否かを検知し、点灯や破損を防ぐための過負荷防止装置がある。また、巻き上げ用のワイヤーロープを巻き過ぎたときに、フックがブーム・ジブ・シングルトップに接触するのを防ぐための巻過防止装置がある。さらに、玉掛けロープがフックから外れるのを防止するためには、玉掛ロープ外れ止め装置が用意されているのだ。

ブームに関係する部分には、主に3種類の安全装置がある。ひとつ目は、作動範囲制限装置だ。これは、あらかじめ登録したブームの角度(上限・下限)・揚程・作業半径・旋回位置(左・右)を超えないように、クレーンの作動範囲を制限するものである。ふたつ目は、旋回自動停止装置。ブームやジブの長さ、作業半径ごとのつり上げ能力をまとめた定格総荷重表の大きい旋回位置から、小さい旋回位置に旋回したとき、オーバーロードにならないように旋回を自動的に停止させる。3つ目は、起伏緩停止機能である。ブーム起伏動作を停止するときにに揺れが起こりやすくなるが、このとき起伏速度を減速させ手に揺れを緩和する装置だ。

また、油圧に関する部分には油圧安全弁と油圧シリンダーロック装置がある。前者は、油圧ポンプから送り出される作動油を監視し、油圧回路が破壊されかねないほど高圧になった場合にそれを防ぐためのもの。後者は、作動油が漏洩した場合に作動を停止するためのものだ。ブームの起伏シリンダや伸縮シリンダーのほか、ジャッキシリンダーなどに装着される。このほかにも、アウトリガーの張り出し幅を検出して、過負荷防止装置に表示するアウトリガー張出幅検出装置などがあるのだ。

こういった安全装置は、必ずしもすべてのクレーン車に装着されているわけではない。しかし、技術の進歩と安全意識の高まりを受けて、確実に安全装置の普及は進んでいるといってよい。一般社団法人日本クレーン協会の資料では、吊り荷の落下・吊り荷の衝突・車体の転倒・作業床からの作業員転落・車体と作業員の接触などといった事故が、後を絶たないということだ。これらの事故を防ぐためにも、クレーン車に安全装置の装着を進めることは必要不可欠なことなのである。

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