
液体や気体を運搬するためのタンクが搭載されたトラックの総称がタンクローリーだが、これはトラックを意味する「ローリー」と容器の「タンク」を合わせた呼び方だ。
そしてこのタンクローリー、タンク自体の形は似ていても、素材や役目が違うのだ。そこで、今回はタンクローリーの容器部分に焦点を当てて説明していこう。
タンクローリーが運搬するものは、石油製品(ガソリン、軽油、灯油など)、化学薬品、液化ガス、牛乳や飲料水といった食品類、さらには粉粒体(セメントや小麦粉など)まで多岐にわたり、タンクの素材選びは、輸送する内容物の特性や安全性、効率性に直接関わる重要な要素といえる。そして、安全かつ効率的な輸送のため、内容物の化学的性質や温度管理、腐食性などに応じた適切なタンク素材が不可欠というわけだ。
もしも内容物の特性に合っていない素材のタンクを使用した場合、タンク内部で化学反応が生じたり、腐食や劣化が進行したりすることで、輸送中の事故や漏洩リスクが高まってしまう。そのため、各種法規制とも連携しながら、最適な素材選定重要になるのだ。
では、まず簡単にタンク―ローリーの種類と素材を確認しておこう。
危険物タンクローリー

危険物タンクローリーは石油や劇薬類を運ぶのに使用される。タンクの材質は基本的に耐久性が高く、 化学変化が起きにくい普通鋼や強度を上げた高張力鋼材が使われる。
非危険物タンクローリー
非危険物タンクローリーはセメントや食品・飲料水等を運搬するのに使用される。素材は腐食や傷に強いステンレスが採用されることが多い。
高圧ガスタンクローリー

高圧ガスタンクローリーは高圧ガスを運ぶのに使用される。素材は圧力に強い高張力鋼材が使われることが多い。
では次にタンクの素材について説明していこう。
タンクローリーで使用されるタンク素材には、ステンレス鋼(ステンレススチール)、アルミニウム合金、FRP(繊維強化プラスチック)、樹脂(ポリエチレンなど)、炭素鋼(カーボンスチール)などがあり、それぞれ特徴が異なっている。
ステンレス鋼

ステンレス鋼は、鉄にクロームやニッケルなどを加えて耐食性を高めた合金で、腐食に強く、薬品や食品など、衛生面と安全性が求められる内容物の輸送に最適な素材だ。牛乳や飲料水、医薬品、酸やアルカリなどの化学薬品輸送に多用されており、長期間使用しても腐食や劣化が少なく、メンテナンス性にも優れている。また、タンク内部の洗浄がしやすく、残留物の蓄積を防げる点も大きなメリット。
アルミニウム合金
アルミニウム合金は主にガソリンや灯油、軽油などの石油製品輸送タンクで広く採用されている。さらに軽量であることから車両全体の重量を抑えられるため、積載効率が向上し、燃費の改善やCO₂排出量の削減にもつながるメリットがある。逆にアルミニウムは酸やアルカリには比較的弱いため、強い化学薬品には適していない。
FRP
FRPは、ガラス繊維などを樹脂で強化した複合素材で、軽量で耐食性・耐薬品性に優れ、近年では化学薬品や一部食品類の輸送タンクにも用いられるようになってきている。成形の自由度が高く、複雑な形状や多層構造のタンクも製造可能なことが特徴と言える。ただし、金属素材に比べると強度や耐衝撃性では劣る。
こうした素材の特性を踏まえたうえで、タンクローリーのタンク素材を選定する際には、以下のようなポイントが挙げられる。
・輸送する内容物の化学的性質(酸性・アルカリ性・腐食性など)
・内容物の温度・圧力
・衛生性や食品衛生法などの法規制
・耐久性・メンテナンス性
・車両の総重量や積載効率
・コスト・ライフサイクルコストなど
では最後にタンクと法令の関係を簡単に説明しておこう。
タンクローリーのタンク素材には、運輸省や消防法、危険物取扱法など各種法令に基づいた厳格な規制が適用されている。特に危険物を輸送する場合には、耐圧・耐食・耐火性などの安全基準を満たすことが必須となる。
また、定期的な検査やメンテナンスが義務付けられており、素材の劣化や損傷が発見された場合は速やかに修理・交換が求められるのだ。