
2025年7月25日~27日の3日間、栃木県宇都宮市にある大谷資料館にて世界初の「デコトラ展」が開催された。デコトラのオーナーや愛好家なら、同好の士が集まる「チャリティ撮影会」というイベントに参加したことがあるだろうから、デコトラが集まることにそれほど珍しさを感じないかもしれない。しかし、これらのイベントは「アートクラブ」という集まりに所属しているか、その関係者が対象の集いである。そういった組織に属さない、あるいはコネクションを持たない一般のデコトラ好きにとって、今回の展示会は千載一遇のチャンスであったわけだ。
開催場所になった大谷資料館は、決してトラックに関係のある施設ではない。この地域一帯で産出する大谷石の採掘場跡を資料館にしたもので、宇都宮市の観光スポットのひとつである。JR宇都宮駅から路線バスで西に約30分、クルマだと東北自動車道宇都宮インターチェンジから南に約8分程度の場所に位置している。地上にある資料室のほか、採掘場であった地下には広大な神秘的空間が広がっており、以前から映画・ドラマ・CMなどの撮影にも使用されていた。
会期中はデコトラファンが大勢詰めかけて、駐車場は常に満車状態にあったという。彼らを魅了したのは、なんといっても展示車両が豪勢であったことだ。地下に潜る手前の地上広場には、国内最大級のクラブ「全国哥麿会」に所属するデコトラ「美咲嬢Ⅲ」と「竜神丸」が展示されており、この段階でデコトラファンのボルテージは一挙にマックスに達していた。両車両は共に箱バンの大型トラックで、キャビンには電飾・バンパー・サイドミラー・バイザー・箱絵など、デコトラの装飾を形成するすべての要素が詰め込まれている。


資料館の改札を抜けて細い階段を地下に降りると、そこには広大な空間が広がっている。地上ではセミが鳴き、7月の強い日差しが照り付けていたが、地下はひんやりとした空気に包まれて少し肌寒い。そこに、電飾を絢爛豪華に点灯させたデコトラが展示されており、同クラブの「夢特急Ⅲ」「第三夜桜丸」「美咲嬢Ⅱ」「三番星陽炎丸」に加えて、デコトラ界のレジェンドともいえる「一番星号」の姿もあった。


地下展示場は薄暗いので電飾がとてもよく映えており、まるでナイトシーンのようである。これらの電源は、車両のエンジンからとっているのではない。そんなことをすれば環境にもよくないし、地下空間に排気ガスが充満してしまうことになる。そこで、別途にトラック用の大型バッテリーを用意して電気を供給しているのだ。そのため、各車両には点灯スケジュールが決められており、時間によっては電飾を消した状態の車両もある。しかし、点灯していなくてもまた違った雰囲気を味わうことができるのだ。


このイベントはクリエイティブラボの「グランドデザイン」が、デコトラをアートとして展示しようと考えて、全国哥麿会の協力を得て開催したものだ。これまで、デコトラは限られたマニアやファンを中心に日本独自の文化として発展してきた。しかし、世界的に注目を集め始めているこのタイミングに合わせて、アートとして再定義しようというわけだ。確かに、デコトラは文化といってもよいレベルのクオリティを持つものが多い。この展示をきっかけに、新たな日本文化として定着することが期待されている。
