
建設現場では欠かせないコンクリート。セメントに砂や砂利といった骨材を混ぜ、水を加えたものを生コンと呼んでいる。この生コンは、化学反応によって凝固する建築材。型枠に流し込むことで任意の形にすることができ、堅牢な壁や柱などにすることができるのだ。ただ、水を加えると同時に化学反応が始まってしまうため、素早く現場に移送しなければならない。その役割を担うのが、コンクリートミキサー車である。
この車両は、トラックをベースに特殊な架装がされている。車両後部にある生コンを入れるタンクはドラム型になっており、運搬中は1分間に1.5回転の速度で回っている(生コンを作るときには13回転/分)。これは、生コンをかき混ぜてセメントや骨材などを攪拌するためだ。これをしなかった場合、運搬中に振動で生コンが分離してしまう。それを、そのまま建築材として使用することはできない。凝固していなければ現場で再攪拌をすれば済むが、それでは2度手間になる。やはり、運搬中に攪拌するのが合理的なのである。
生コンを「混ぜる」ということからコンクリートミキサー車と呼ばれているが、「攪拌する」という意味からアジテーター車といわれることもある。このように特殊な使われ方をするため、道路運送車両法上では「特殊用途車」に分類されている。そのため、ナンバープレートの分類番号は「8」になっているのだ。
コンクリートミキサー車に搭載する生コンは、コンクリート工場で生産されたもの。これを建設現場などに輸送するのだが、そこには厳格なタイムリミットが存在する。なぜなら、生コンは時間が経つと凝固してしまうからだ。輸送許容時間は90分。そのため、渋滞や荷降ろし時間を計算して綿密な輸送計画の下、建設現場に運ばれていくのである。
生コンは、攪拌ドラム後方上部の「ホッパ」から投入する。投入効率を考えて開口部は広くとられているが、異物混入防止のために蓋が装備されているのだ。ドラム内部は空洞になっているが、攪拌のためにブレードが取り付けられている。これには各所に穴があけてあるが、それは攪拌や生コンの排出をしやすくするための工夫だ。


現場に到着した生コンは、コンクリートミキサー車から直接型枠に入れるわけではない。その役割を担うのが、コンクリートポンプ車だ。コンクリートミキサー車がドラムを逆回転させてシュートから生コンを排出し、コンクリートポンプ車のホッパに流し込む。この生コンをコンクリートポンプ車はピストンを使ってチューブに送り、最後はローラーで型枠に押し出されるのである。
コンクリートポンプ車にはブームが装備されており(なかには配管車のようにブームを持たないタイプもある)、それを伸ばすことで高層ビルの上階にも生コンを送り出すことが可能になる。最も高い場所に送り出した例は、地上約300mなのだそうだ。コンクリートミキサー車が生コンを運び、コンクリートポンプ車がそれを現場で型枠に送り届ける。決して目立つ存在ではないのかもしれないが、建設現場にはなくてはならない重要な車両なのである。
