活躍が期待されている国土交通省の「トラック・物流Gメン」

「物流の2024年問題」がいわれて久しい。これは、トラックドライバーの労働環境を改善するべく、一定の残業上限が設けられたことに端を発した問題だ。残業時間が制限されれば、トラックドライバーひとり当たりの仕事量は少なくなる。一方、ECサイトの発達で小口の荷物は増加しているから、トラックドライバーを増やさなければ荷物を捌き切れなくなってしまう。ところが、なり手が少ないためにトラックドライバー不足が起きてしまっているのだ。

トラックドライバーに応募する人が少なく離職が絶えないのは、決して良いとはいえない労働環境に原因を求めることができよう。特に、不当な低運賃の強要(=低賃金)や長時間の荷待ちなどの問題は、立場の弱いトラックドライバー(運送事業者)にとって、簡単には解決することができないのである。

国土交通省も所管官庁として、以前からこの問題には真剣に取り組んできている。しかし、問題を把握して荷主に「働きかけ」や「要請」を行っても、素直に応じない悪質な事業者が少なくなく、なかなか成果が挙がらなかったのである。そこで、これまで82人で行なっていたこの業務を162人体制に増員し、「トラックGメン」と名付けて強化を図ったたわけだ。

そもそも、「Gメン」とはガバメント・マン(Government Man)の複数形で、直訳すれば「公務員」と訳すことができる。アメリカでは犯罪捜査や強制執行を行うFBI特別捜査官を指すことから、「Gメン」=「特別捜査官」というイメージがついたのだといわれている。日本でも「麻薬Gメン」「労働Gメン」など、警察とは別組織で何らかの監視や取り締まりを行なう公務員のことをそう呼ぶようになったようだ。

「トラックGメン」は、2023年6月に発足した。「取り締まり」のイメージから、当初は「トラックが取り締まりの対象になるのでは」と誤解する人もいたが、実際は前述のようにトラックドライバーの味方であったわけだ。創設後の動きは速く、同年10月には貨物自動車運送事業法に基づいて、「働きかけ」を120件行い「要請」を5件実施するといった成果を発表している。

さらに、同年には11月と12月を「集中監視月間」として、荷主や元受け事業者などが運送事業者に違法な要請をしないように監視を強化。この期間だけで「働きかけ」を47件、「要請」は164件実施している。また、すでに「要請」を受けていたにもかかわらず、違反原因行為を続けている可能性がある荷主などに対し、2件の「勧告」も行なった。

一方、同年の9月~10に全トラック事業者を対象に実施した調査では、

・長時間の荷待ちを強いる

・運賃や輸送料金の不当な据え置き

などを行なっている悪質な荷主や元受けのいることが判明した。これを受けて、同省の荷主特別対策担当官や中小企業庁の「下請けGメン」等と連携し、事態の改善にあたっている。

また2024年11月には情報収集機能の強化を図り、物流竜産業全体の取引適正化を進めるため「トラック・物流Gメン」へと改組。162人だった専従職員は地方運輸局などの物流を担当する部署の職員29人と、各都道府県のトラック協会が新たに設ける「Gメン調査員」166人を追加し、総勢360人規模(357人)に拡充。併せて倉庫業の業界団体にも情報収集窓口を設置し、地方運輸局などと連携し、情報収集を行なっている。

こういった「トラック・物流Gメン」の活躍により、荷主や元受け事業者を中心とした運輸業界の意識に、少しずつ変化がみられているという。ただ、「物流の2024年問題」はすでに待ったなしの状態のところまで来ているから、さらに一段上の意識改革を行なう必要があるといえよう。必ずしも好ましいこととはいえないかもしれないが、「働きかけ」「要請」「勧告」といった指導に従わない悪質な事業者には、厳しい罰則規定も視野に入れる必要があるのかもしれない。

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