高速道路で実感できたトラックドライバーの気持ち

ちょっとした用事で地方までクルマで行くことになったときのことだ。中央自動車道を使って向かう先は長野方面。最近では頻繁に通るルートだけに、これといった心配もなく当たり前のように目的地へ到着するはずだった。しかし、ひとつだけいつもと違っていたことがある。それは乗っていくクルマが軽自動車のバンということ。そして、その軽バンはちょっと旧めの5速マニュアルだった。

当日は順調に都内を抜けた、といいたいところだが、普段使いの大排気量のハイブリッドと比較すると、軽自動車のマニュアルはさすがに快適とはいい難い。いくら空荷とはいえ、信号でのスタートからしばらくは唸るエンジン音に「壊れないんだろうか?」と疑問が沸くこともしばしばあった。なにせマニュアルのくせにタコメーターはなく、120㎞までの文字が書かれたスピードメーターがあるだけだ。高回転まで引っ張ってギアチェンジをするのは楽しいが、しばらくするとそれも飽きる。そんな状態で、中央自動車道へ突入するわけだが……。

走ったことがある方ならわかるだろうが、中央自動車道は上下線ともにカーブも多く、さらにアップダウンが激しい高速道路だ。その証拠にあらゆるところに、登坂車線が設けられている。

そして今回、片道250キロの道のりで幾度となく訪れた登坂で、トラックドライバーの気落ちが痛感できたのでレポートしたいと思う。

一般ドライバーから見て、大きくて遅いトラックどうしてもは邪魔に思えてしまうことはあると思う。とくにトラックが追い越し車線をゆっくりと走っているときや、複数台が車線を占領するかのように並んで走っているときは、迷惑な存在と思われがちだ。こんなとき「遅いなら端っこを走ってほしい」と考えてしまうが、このトラック通せんぼ状態には理由があるのだ。

筆者が運転していたのは軽自動車で最高速度はどんなに頑張っても平坦な場所でも100キロ程度だろう。これはたぶんトラックと同じくらいだ。そのため、少しでも上り坂に差し掛かると、どんどんスピードが落ちてしまう。それまでは快調に5速ホールドで走っていても、気が付くとメーターは80キロを指している。あわててバックミラーを見ると、まあまあ近い距離にいる後続車。

この状態に気が付き、4速にギアを落としたとしても非力は軽バンはすぐには加速してくれない。さらに、前に走るトラックを追い抜こうと追い越し車線に進路変更したはいいが、先行しているトラックを抜こうにも、スピードが出ないのでしばらくは走行車線を走るトラックと並走状態となることもあった。

こうした状況を繰り返すことでしみじみ分かったのは「トラックドライバーは大変だ」ということ。実際にトラックと同じくらいのスピードしか出ず、加速も同等の軽トラに乗ると、高速道路でトラックドライバーがいかに神経を使って運転しているかがわかるというものだ。

なにせ、加速は悪いし最高速も速くない。こうなると上り坂で速度が落ちると車線変更でさえ速度のロスにつながるのだ。さらに速度が落ちてしまうと再加速しても一定のスピードまでに戻るまでは時間がかかるため、高速道路の走り方としてはできるだけスピードを保つことが大切なのだと理解できる。

これらのことを踏まえると、走行車線と追い越し車線で並走しているトラックはこんな状況だと解釈できる。

1台のトラックが追い越そうとするが、お互いのトラックにそれほど速度差があるわけではない。また現在の大型トラックには90km/hのスピードリミッターの装備が義務付けられており、その速度以上の加速は物理的にできない。そのため、抜ききるまではしばらく時間がかかってしまうため、並走状態が生まれるのだ。このとき抜くほうのトラックもできるだけ短時間で抜ききりたいのでアクセルは踏む。しかし抜かれる方もスピードが落ちると速度が回復するまで時間がかかるので、そのまま進む。この状態を一般車から見ると「並んで走るなよ」ということになるのだろう。

このほかにも複数の走行車線の真ん中を走っていても、気が付かないうちに上り坂になっていて、後続車に追いつかれてしまうケースが多くあった。こうなると、急いでさらに左車線に寄るか、場所によっては登坂車線に移動するしかない。

しかし、このときスムーズに車線変更できればいいが、移りたい車線にほかの車両がいた場合、車線変更するだけでも一苦労なのだ。なにせこちらは遅いし加速しないのだから、そのまま移りたい車線を走る車が前に出てくれるのを待つしかないのだ。こうなると心の中で後続車に謝るしかない。

こうして、上り坂、後続車、同じくらいの速さのトラックという難関を潜り抜け、ようやく目的地近くのサービスエリアにたどり着くころには、まさに疲労困憊だった。

普段はあまり気にしないでバンバン追い抜いているトラックだが、こうして似たような条件で高速道路を走ってみると、トラックドライバーの大変さが十分に理解できるというものだ。

次からはトラックが前にいても焦ることなく、ゆっくりと走ろうと誓う筆者であった。

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