
地球温暖化による異常気象の影響なのか、ここ数年は記録的な暑さが続いている。そのようななかで子供やペットが車内に取り残されれば、命にかかわる大事に発展しかねない。
もっとも、ドライバー自身であればドアのロック解除法を知っているし、キーも手元に置いてあるだろうから脱出することは可能である。ところが、トラックの場合はドライバーでも閉じ込められる危険があるのだ。
トラックの運行では、バスのように交代要員を乗せて走ることが非常に少ない。基本は、ワンオペである。運転はもちろんのこと、荷物の積み降ろしもひとりで行うことがほとんどだ。とはいえ、キャビンから出られなくなるということは、乗用車同様にほとんどないといってよい。ただ、荷室に閉じ込められる危険性は皆無ではないのだ。

ドアの数やウイングの有無はさておき、キャビンと行き来ができない箱バンタイプのトラックの場合、基本的に荷室は内側から開けることができない。すなわち、閉じ込められたら出るすべがないのだ。とはいえ、荷室のドアはオートロックではなく、外側から手動でしかロックをかけることができないので、荷室にいるときに風などによってドアが閉まったとしても、開かなくなるなどということはないはずである。
しかも、万一荷室のドアが勝手に閉まった場合に周りに通行車両や人がいれば、接触して事故につながる可能性がある。その対策として、開いているドアを物理的に固定するロック装置が設けられているので、ドライバーはそれを確実に作動させているはずである。しかし、まれにロックの掛かりが甘いなどした場合、ドアが勝手に閉まってしまうことがあるのだ。その際、運悪く外側のドアロックが軽くでもかかってしまえば、荷室にいるドライバーは閉じ込められた状態になってしまう。

こうなると、ドライバーは自力で脱出するすべがない。猛暑日であれば、1時間も経たないうちに熱中症になる危険性がある。内側から荷室の壁を叩いたとしても、どれだけまわりに伝わるであろうか。そのような場合の対策として、荷室内には「非常警報装置」が設置されている。これを作動させればクラクションやブザーなどが鳴動し、外に向かってドライバーの危機を知らせてくれるのだ。

この警報装置、小型トラックは車両メーカーで取り付けていることが多く、クラクションに連動しているタイプがほとんどだ。中型・大型トラックは、荷室を架装メーカーで製造していることが多いため、別途警報用のブザーを搭載しているようだ。もっとも、冷凍車の場合は閉じ込められると直ちに命にかかわることになるため、多くの車両に内側からドアを開ける装置が付けられているという。
ただ、この警報装置はあまり一般に周知されていない。これでは、万一の際に警報装置が作動していても、まわりにいる人たちは盗難防止装置の誤作動と勘違いをして、閉じ込められたドライバーを助けようという行動に出ない可能性がある。トラックドライバーにとっては命にかかわる問題なので、こういった装置があることを広く世間に周知してもらいたいものだ。
