高速道路作業員のトイレはここまで進化している

高速道路でトイレに行きたくなれば、迷うことなくサービスエリア(SA)かパーキングエリア(PA)に駆け込むことになるだろう。本線上で用を足すことはできないが、一定の距離を走れば必ずトイレがあるのだから、不案内な街中よりはるかにトイレ事情に恵まれているといえるのではないだろうか。

逆に、道路工事などの作業に従事する人の立場からすると、街なかなら事前に公衆トイレを調べておいたり、商業施設にトイレ利用の根回しをしたりすることができる。しかし、高速道路ではSA・PAに近い現場でなければ、トイレもままならないということになるのだ。

もっとも、SA・PAではなくても料金所が近ければ職員用トイレがあるので、それを利用することができる。そうでなければ休憩時間などに、クルマでSA・PAなどトイレのある場所にに移動しなければならない。仮に工事現場が上り車線にあったとした場合、上り車線を通ってトイレのある場所に行ってから、さらに先のインターチェンジまで進んでいったん降りる。そこから下り車線に入り直して工事現場の先にあるインターチェンジまで行き、再び上り車線に乗って現場に戻ることになる。すなわち、大きなタイムロスを生むことになるのだ。

いくらタイムロスが大きいからといって、クルマの陰で用を足すなどということはできない。一般車の多くにドライブレコーダーがついているから、そんなシーンが映っていようものならSNSなどにアップされて、責任問題に発展することになりかねないのだ。もっとも、それ以前にコンプライアンス上の問題として許されるものではない。

そこで、イベント会場などでもよく見かける仮設トイレが導入されるようになった。平ボディのトラックに、ロープなどで固定するなどして設置されていることが多い。災害時の仮設トイレのように、下水設備につなぐことはできないのできないので汲み取り式になる。近年では、工事現場にも女性作業員が増加傾向にあることから、さらにトイレ事情を改善しようという動きが盛んになってきているのだ。そこで注目されているのが、トイレカーである。

トイレカーは仮設トイレの延長線上というよりも、キャンピングカーのトイレがベースになったものだと考えたほうがしっくりとくる。もともと、キャンピングカーはレジャーを目的としたもので、快適性や利便性を考慮しており、トイレカーもそれを踏襲しているのだ。車両は主にバン・軽トラック・小型トラックなどが使用され、その後部にトイレ設備を架装しており、ユニットバスのような清潔さを備えている。

車両後部全体を使って設置しているために十分な広さが確保できるので、複数の便器を設置することも可能だ。トイレだけではなく、フィッティングボードや手洗い場を備えたタイプなら、更衣室としても使用できる。トイレの仕様は様々だが、普及タイプでは手洗いなどに使用する水のタンクが約100ℓ、便槽タンクが約260ℓのものを搭載しているので、比較的長時間・多人数の現場にも対応が可能だ。最新式のものの中には排泄物を熱圧着で包装し、臭いを漏らさず衛生的に処理する機能を持つものもあるという。「3K」などといわれる工事現場も、こういった設備の積極的な導入で、少しずつ働きやすくなってきているようである。

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