
「物流の2024年問題」は、運輸業界にトラックドライバーの不足という深刻な影響を与えた。これは、同じ現場仕事である建設業界も同様で、熟練の技を必要とする建設機械のオペレーターが足りなくなる事態に陥っているという。建機オペレーターは一般に「技能労働者」と呼ばれているが、これが2019年段階では現場で330万人が活躍していたのだが、2025年には200万人を下回るのではないかといわれているのだ。
マンション建設や都市開発は留まるところを知らず、都市部を中心に各所で大規模な工事が進められている。こういった大型の建設・建築現場では必ず多くの建機が活躍しており、1台ごとに熟練のオペレータが操縦を任されている。ところが、わずか5年余りでその人数が2/3以下に減少するのだとすれば、建設業界は危機的に陥りかねない。


こういった背景の下、一般社団法人・運輸デジタルビジネス協会と一般社団法人・千葉房総技能センターが、「e建機チャレンジ」という競技会を開催した。これは、建機を使用した遠隔操作技術を競う大会だ。この大会が注目された理由は、参加者が現役の建設業界関係者だけではなく、プロやアマの「eSports」経験者などもいたからである。すなわち、建機の遠隔操作技術を競うことに加えて、将来のオペレーター発掘の可能性も探っているのである。


そのため大会の目的には、「建設機械遠隔操作技術の社会実装(技術・法令・教育・人材・普及)」だけではなく、「非就労者・未経験者などの就労支援による建設業界への人材創出」を掲げている。さらに、各地で多発する震災や豪雨被害などを踏まえて、「建設機械の遠隔操作技術と新たな人材による災害救助、災害復旧支援体制の構築と社会貢献」もそのひとつとして挙げているのだ。
本大会には、eSportsサークル所属学生チームの「スーパー学生連合チーム極」、プロeSportsチーム「Sengoku Gaming」、女性建機ファンチーム「建機ファン女子」のほか、建設事業者を代表して「竹中土木オートボット」と、前大会の優勝者である「丸磯建設」が参加。この大会に先立って、重機操作シミュレーションアプリ「重機でGo」を使用した予選会が開催され、その上位者がチームを組んだ「重機でGoペーパーオペレーターズ」も強者の待つ本選に加わった。

競技は千葉市緑区の現場で稼働する建機を、東京都港区にあるオペレーションセンターから操作するというもの。1回戦は「丸磯建設」以外の5チームが、課題に沿って建機を操作するタイムトライアルに挑戦。「積み込み土砂の量」「白線逸脱」「パイロンなどの設置物との接触」などを、審査員が細かくチェック。なにか問題があれば、ペナルティが課されるという方式で行なわれた。
勝ち上がったのは「Sengoku Gaming」で、「丸磯建設」と決勝戦を戦った。優勝したのは、「丸磯建設」。とはいえ、「重機でGoペーパーオペレーターズ」も敗れたとはいえ、タイム差はごく僅かであったという。建機のオペレーターといえば、現場での経験が第一と考えられてきたが、遠隔操作であればゲームを入り口とする人材の就労も、選択肢に入ることが証明されたわけだ。今後の展開が楽しみである。


