港で働く荷役機械あれこれ

物流のスタート地点ともいえる港湾エリア。一般人では立ち入ることの難しい区域も多いため、その荷役作業を実際に見る機会はあまりないのだが、実は想像以上に大きな機械が多く活躍している現場でもある。

その現物をみると、日常生活で目にする機械の何倍もの大きさがあるのに、たったひとりで華麗に操作している姿はまさに職人技といえる。そこで今回は、こうした港湾エリアならではの荷役機械を紹介していこう。

ガントリークレーン

コンテナを積んだり降ろしたりする荷役機械で、その形から「海キリン」と呼ばれることもある。神戸港には、岸壁から22列分のコンテナを取り扱うことのできるガントリークレーンが、国内最多の13基も設置されている。一番背の高いクレーンは120メートル。約65トンの重さのコンテナを吊り上げられる。

このガントリークレーンだが、操縦するには免許が必要となる。クレーンには様々な種類があり、代表的なものとして工場などの天井付近に設置され建屋に沿って設けられたランウェイを走行する天井クレーンなどがある。そしてこれらのクレーンを動かすために必要なのがクレーン・デリック運転士免許であり、つり上げ荷重5トン以上を含め、すべてのクレーンとデリックを運転・操作することができるため。港湾現場でガントリークレーンを操作するには、この運転士免許が必要ということになる。クレーン・デリック運転士免許は労働安全衛生法に定められた国家資格(免許)のひとつ。

このクレーン・デリック運転士には3種類あり「限定なし」の場合は、すべてのクレーンとデリックを運転できるが「クレーン・デリック運転士(クレーン限定)」は、クレーンのみ運転できる。また「クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定)」は、床上運転式クレーンのみ運転可能というように分けられている。

トランスファークレーン

コンテナターミナル、港湾などの貨物の積み替え拠点で、海上コンテナを移動させたり積み上げたりするために用いられる荷役機械。貨物の積み替え場所のみで使われることを想定した特殊車両でありタイヤ式門型クレーンとレール式門型クレーンの2種類がある。間口が広く門型の形が特徴。

トップリフター

トランスファークレーンと同様にコンテナを運ぶ荷役機械だが、その仕組みに違いがある。トップリフターというのは、大型フォークリフトの一種で、フォークリフトに装備されているツメの代わりにスプレッダーという装置が取り付けられている。通常のフォークリフトは、フォークを荷物の下に差し込んで持ち上げて運ぶが、スプレッダーは、コンテナ上部の四隅についている穴にツイストロックを嵌合させて、上から持ち上げて運ぶのが特徴。運転に必要な免許はフォークリフト運転技能講習修了証だ。

リーチスタッカー

リーチスタッカーとは海上コンテナを吊り上げて移動・積上げをしたり、シャシーに積み下ろししたりする荷役機械。最大で上に5段、奥に3列まで積むことができる。

港湾内のヤードが混雑しているときに、次の仕事の関係でどうしてもヤードに返却する時間がない場合、リーチスタッカーを使用してコンテナの一時置き場に貨物を下ろすことができるため、ヤードに入る時間の短縮に役立つ。この車両を運転操作するにはショベルローダー等運転技能講習修了証が必要。

フォークリフト

荷役作業に置いて使用頻度の高い荷役機械。パレットに積まれた貨物を移動させることができる。一般的な物流倉庫などで見かけるフォークリフトは2トン程度のことが多いが、港湾で使用されるフォークリフトは40フィートコンテナなどを運搬するため、30トン級となっており、車体の大きさも通常のフォークリフトの5倍程度はある。運転に必要な免許はフォークリフト運転技能者講習修了証。

アンローダ

アンローダとは、岸壁において本船から鉱石や石炭などのばら積み貨物を陸揚げする機械で、原材料の大部分を輸入に依存している我が国において極めて重要な港荷役機械だ。アンローダは、グラブバケットによって間欠的に荷役を行う「間欠式」と、ベルトコンベアなどの機械、または搬送媒体に空気を利用する「連続式」の大きく2種類に分類される。

ストラドルキャリア

ストラドルキャリアは大きな門形の構造を備えており、この内側に上下するスプレッダーというコンテナをつかんで持ち上げる装置を備えている。スプレッダーでコンテナを持ち上げると、門形構造の内側にコンテナを抱え込んだような状態になり、下部に備えたゴムタイヤにより自走して移動できるようになっている。ヤード内のコンテナを移動・整理するときに用います。ストラドルキャリアは比較的小回りがきき、コンテナを2~3段まで積み上げることができる。

ここまで紹介してきた荷役機械は活躍するエリアが港湾のため、なかなか実際の稼働を目にする機会が少ないもの。もし港湾エリアに行くチャンスがあれば、荷役作業をしているエリアをちょっと注意して見てはいかがだろうか。タイミングが合えば巨大な機械たちの迫力ある動きが観察できるかもしれない。

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