
積載車とは、その名のとおり車両を積むことができるトラック。似て非なるものに、レッカー車やキャリアカーがある。積載車は荷台がスライドするなどして地面付近に移動し、搭載車両は自走あるいはウインチによる牽引などで荷台に載せる。基本的に、積めるのは1台だけである。

今回紹介するトヨタダイナの積載車は、荷台を地面にスライドさせたときにフラットになるタイプ。これを、車両輸送業界では「ベタ降り」と称している。地面に「ベタッ」と、接地するからであろう。もちろん、積載車のすべてが「ベタ降り」というわけではない。搭載車両が安全に登り降りできる程度の角度ではあるが、荷台が斜めになったままのものも多くある。「ベタ降り」は搭載車の乗降を安全かつスムーズに行なえるというメリットを持つが、スライド機構が複雑であることによるコストアップや、搭載時に車両後部のスペースを広く必要とするなどのデメリットもある。



この積載車のベース車両はダイナなので、キャビン内はトラックのそれとほぼ同じ仕様になっている。運転席に座れば、まず目につくのはステアリングだろう。操作性を考えて、乗用車より大きいだけではなく床面とほぼ平行になっており、トラックらしい雰囲気を醸し出している。ちなみに、この積載車はマニュアルトランスミッション。ゆえに、足元には3つのペダルが並んでいる。


車両を載せるためには、まず荷台面を地面に降ろさなければならない。荷台の最後部にテールランプが付いており、その下にガイドとなるローラーがある。このローラーは地面に接して、荷台を支えながらスライドしていく。荷台がすべて降りると車両後方で地面にベタ付きし、完全にフラットな状態になる。すなわち、この作業のためには車両全長+荷台全長+αのスペースが必要になるわけだ。


荷台が下りた車両後部は、シャシーが丸出しの状態だ。シャフトや車軸はもとより、燃料タンクやタイヤ上部まで丸見えになる。まるで、ボディ架装前の状態を見ているようだ。荷台を動かすためには、動力が必要になる。架装部分の動力は電動や動力用エンジンを使用するのもあるが、多くはPTO(パワーテイクオフ)と呼ばれる機構が使われる。これは、走行用エンジンから動力を得る仕組みだ。


この積載車もPTOなので、まずエンジンをかけてからPTOのボタンを押す。すると、荷台を動かせるようになるのだ。荷台は降ろすと、先述のようにフルフラットになる。自走する搭載車両であれば、左右幅だけ気を付ければ簡単に載せることができる。ゆっくり前進し、前輪が輪留めに到達すれば搭載完了だ。


搭載後は、固定作業をしなければならない。搭載車のフロントを、牽引フックで固定。同じように、リアも固定する。搭載車にサイドブレーキをかけておくことはいうまでもない。こういった固定作業をきちんと行なっておかないと、積載車の揺れで搭載車が動くことがある。それにより、搭載車が荷台にぶつかって傷がついたり、最悪の場合に落下したりする危険があるのだ。技術が進んで作業性は改善されているが、手順を守って慎重な作業をすることが大切だといえよう。
