カメラとトラックのメーカーがコラボしたすごいカメラシステム

カメラを扱った人なら当たり前のことかもしれないが、遠くのものや近くのものをそれぞれ撮影するときには、焦点距離の異なるレンズを使用する。いい換えれば、近い距離で広い範囲を捉えようと思えば広角レンズが必要で、遠くのものを大きく写そうと思えば望遠レンズが必要だということである。すなわち、被写体の距離や捉える範囲によって、それに応じたレンズを用意しなければならないということだ。

これを1本のレンズで行なおうとすれば、ズームレンズという特殊な機能を持つものが必要になる。このレンズは本体が伸び縮みすることで、焦点距離を変更することができるのだ。大変便利ではあるが、構造上どうしても大きくなる。それに、多数のレンズが必要になるので映像が暗くなってしまう。ゆえに、本体が薄さや軽さを求められるスマートフォンは、複数のレンズを取り付けて望遠撮影や広角撮影をカバーしているのだ。

このことは、車両についても同じである。車両のセンサーはミリ波などの電波が使用されることもあるが、これは障害物などの有無を確認するだけのものでしかない。捉えた対象が何であるのか明確にするためには、それを映像化する必要がある。そこで、カメラが使用されるようになったのだ。

ITS(intelligent Transport System、高度道路交通システム)が緒に就いた1990年代半ばごろは、まだカメラ映像の解像技術がそれほど高くはなかった。そのために、道路やその周囲の人・自転車・バイク・自動車・標識・信号・建物などを、正確に認識することが難しいとされていたのである。しかし、その後映像の解析技術が著しい進化を遂げたことで、カメラがセンサーとしての役割を持つようになった。

ところが、自動運転を視野に入れれば捉えるべき情報の対象は、きわめて遠距離かつ広範囲になる。すなわち、広角レンズと望遠レンズが必要になるということだ。こういった問題を解決するべく、光学機器メーカーのニコンと三菱ふそうトラック・バスが、新たな車載用カメラの開発を行なったのである。

今回両社が開発したのは、望遠レンズと広角レンズを一体化させたというもの。言葉で表せば簡単なことだが、決して一朝一夕でかなう技術ではない。詳細の技術は企業秘密のようであるが、おそらくレンズの中央部に望遠レンズを形成し、その周りを広角レンズにするといった方法がとられていると考えられる。わかりやすくいえば、遠近両用メガネのようなものであろうか。

レンズを合体させたことによって、当然映像に歪みが生じる。しかし、現在の映像解析技術はAIを駆使したものであり、歪みや映像の修正はかなり高い精度で行えるのだ。望遠レンズと広角レンズを合体させたレンズが捉えた映像も、違和感なく再現することが可能になっているのだろう。

スマートフォンのように複数のレンズを使用すれば、どうしてもレンズごとに光軸のずれが発生するために、視差が発生してしまう。このレンズであればそういった問題がなくなり、被写体を同一のものと認識できるようになる。また、センサーとなるカメラの台数を抑えられるという効果があるから、コストの削減にも貢献するのだ。こういった技術が、すぐそこにまで来ている自動運転の実現に貢献するのは間違いないだろう。

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