
かつて、クレスタ・チェイサー・マークⅡ、シルビア・レパードといったハイソカーが一世を風靡し、クルマ好きの若者が社外品のパーツで飾り立て、その華麗さを競っていたことがあった。とくに内装には凝っていて、チンチラのダッシュマットや内張りをふんだんに使い、天井からはド派手なシャンデリアを吊るし、床には毛足の長いフロアマットを敷いて土足禁止にするといったことが定番になっていた。
トラックではそれ以前からデコトラブームの波が幾度か訪れていて、ギンギンギラギラの目立つ車両が街中を疾走する姿が見られたものである。デコトラは外観パーツや電飾も魅力的だが、ドライバーにとっては仕事場であり居住空間でもあるキャビンのなかにこそ個性を主張したいと考えるもの。派手な柄の内装材を張り、目立つ車内照明や水中花のシフトノブなどを取り付けるドライバーも多かったようだ。

しかし、個人の趣味の範囲で収まる乗用車とは違って、トラックは多くが営業車。出荷先や着荷先に出向かなくてはならない。このとき「かっこいい」と受け入れてくれる取引先もあったが、今ではそれも絶滅危惧種。車検に通る合法的な改造でも、見た目が派手なら違法性を疑われかねない。特に一般ユーザーの目がある商業施設などでは、そういった車両に寛大ではないのだ。
こういった背景から、デコトラドライバーのキャビン内装スタイルに変化がみられるようになってきた。もちろん、金華山と呼ばれるド派手な柄の生地をふんだんに使用し、バスと見まがうどでかいシャンデリアをつけるドライバーも健在である。しかし、シンプルさを求める傾向も強まりつつあるのだ。

そのひとつが、無地のモケット使用したスタイル。この生地は、独特の光沢感を持った表面に毛羽があるもので、たいへん肌触りがよく高級感に富む。金華山のような派手な柄ではないから、キャビン内が広く見えるという特徴がある。豪華な雰囲気を得られるので、照明にシャンデリアのような派手なもの付けても見劣りがしない。
もうひとつはレザータッチのシックなもの。乗用車でも高級車のシートにはレザータイプがあり、見た目や肌触りなどに優れているので人気がある。無地だから、モケット同様にキャビン内は広く見える。汚れても比較的掃除が楽だということもあり、埃っぽい現場に行くトラックに好まれる傾向があるようだ。シンプルなので派手な装飾とは合わせ辛く、照明にシャンデリアなどは用いずにLEDのダウンライトなどにしている車両が多い。

このように内装がシンプルになってくる背景には、「キャビン内が派手」というだけで出入りを認めない施設が増えたからだ。違法改造であれば仕方はないが、キャビン内の装飾で違法となる例はあまりない。しかし、「キャビンが派手=違法改造車両」といった図式が出来上がっていて、とくに人目の多い商業施設などでは入場が難しいなどということが多い。
こういった事情からデコトラオーナーのなかには仕事車とは別に、飾るためのトラックを持つ人もいるというが、金銭的な負担が大きいのであくまで少数派だ。多くの令和版デコトラドライバーは、目立ち難い装飾でありながら個性が光る飾り方を、日々模索しているのである。
