
日本のアートトラックのルーツといえば、映画「トラック野郎」で活躍した「一番星号」を思う人も多いだろう。まさにギンギンギラギラ、昭和の象徴のひとつといってもよいド派手なトラックだ。バンパーやキャビンをステンレス製の大きなオリジナルパーツで飾り、銀座のネオンを思わせるようなたくさんの電飾を取り付ける。荷台には、誰もが振り向く強いインパクトのアートを描く。トラックの持ち主であるドライバーが持つ独自のセンスが、その1台に凝縮しているのだ。
しかし、時は流れて法律やそれに伴う取り締まりが厳しくなり、そのような車両が仕事で使用しにくくなったことで、アートトラックの数は激減したと思われている。確かに、以前のようなド派手な車両はあまり見かけなくなったものの、決してアートトラックそのものが姿を消したわけではない。いや、むしろ増えているぐらいだ。

現在では、以前のような大きく直線的なステンレスパーツではなく、流線型のFRP製エアロパーツが使用されるようになり、ヨーロッパ調のカスタムに寄ってきているのである。これは、ボルボやスカニアといった外国製のトラックが増えたことに加えて、国産トラックのデザインも変化してきていることが大きい。現在のトラックは、ヘッドライトがバンパーに組み込まれるようになり、キャビンの形状が流線型になってきている。要するに、スマートなデザインになってきたわけだ。

ヨーロッパのアートはベースとなるトラックのデザインを生かして、スポーティ&レーシーにまとめるのが旧くからの定番である。電飾も、トラックのラインに沿ってクールに配置。2024年5月に、イタリアのミサノワールドサーキットを会場として開催された、カスタムトラックのイベントでもそれが如実に表れているのだ。
ヨーロッパは日本同様に、キャブオーバータイプが主流である。そのため、車種は違えどキャビンのデザインは似通ったものが多い。ゆえに、トラックの外観で大きな差別化を図るのは難しいのだ。そこで、ポイントになるはカラーリングやイラストである。例えば、映画などのなにかひとつのテーマに沿った写実的なイラストを、キャビンから荷台にかけて描いていくなどといったものだ。

キャビン内は派手な色に染めたレザーをふんだんに使用し、ゴージャスな感じを醸しだすのが流行りのようである。また、オーディオに凝る層も多い。とくに増えているのが、スピーカーをドアなどに多数取り付けている車両だ。さながら、首都高の大黒パーキングに集まってくる音響族のようである。
アートトラックがかっこよく仕上がる大きなポイントは、ベース車両のデザインを考慮してカスタムをすることであろう。また、他人のアートを安易に模倣しないことも大切だ。もちろん、リスペクトをするのであればそれは一向にかまわない。しかし、いいとこどりのようなパクリはいただけない。アートトラックは、ドライバーのセンスが強く現れるもの。自身でよく考えて独自性を出すからこそ、満足のいくものができるのである。

