
バス・トラックなど自動車を運転手なしで動かすという発想は、1960年代に流行したSFアニメが火付け役といってよいだろう。登場人物が使用していた無線機は、スマートフォンの登場で現実のものとなり、自身の意思を持つロボットはAIにより実現への道が開かれた。利用者が乗るだけで動き出す車両が走る未来も、すぐそこにまで来ているといってもよいのではないだろうか。
現在、国土交通省では自動運転をレベル0~レベル5の6段階に分類している。レベル0は、従来の手動運転車両。「車線維持支援」や、「アダプティブクルーズコントロール」といった運転支援装置が付くと、レベル2に相当する。ここまでは、必ず運転者が運転席にいなければならないレベルだ。
一般に自動運転となるのは、レベル3以上。特定の条件下とはいえ、完全に運転者が必要なくなるのはレベル4である。バス・トラックの運転手不足や、公共交通機関空白地区におけるバス・タクシーの運行維持は、レベル4以上でなければ解決が難しいとされている。
長野県の塩尻市では、2020年度から利用者の予約で運行するオンデマンドバスを含んだMaaSの実証実験を開始。MaaSとはMobility as a Serviceの略で、「地域住民や旅行者1人1人のトリップ単位(人がある目的を持ってある地点からある地点へ移動する単位)における移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済などを一括で行うサービス」のことだ。

同市は長野県中央部に位置し、幹線国道や高速道路の交わる交通の要衝で人口約6万7千人。ドーナツ化現象が進み、市中心部の人口減と高齢化が深刻だ。そこで、街中と郊外や農山村を結ぶ地域交通の構築を実証実験で模索しているのだ。しかし、地方公共交通の運営は利益や人手の確保に難しい部分があり、これらを自動運転化することで打開しようと考えたのである。
2025年1月、長野県塩尻市が道路交通法に基づく特定自動運行の許可を取得。これまでの実験などに使用していたティアフォー製Minibusを使用し、市内において自動運転走行を開始したのだ。ルートは、JR塩尻駅と市役所を結ぶ一般道路。多くの人や車両が行き交い、建物・街路樹・看板などがそこここにあり、標識や信号など交通規制のある道路を、自動運転車両が安全を確保しながら走行するのである。

現在は、他でも見られる自動運転レベル2による運行。運転手が乗っているから、運行経費が抑えられているわけではない。この実験でデータを積み重ね、将来的には運転手が乗車しないレベル4を目指しているのだ。世間では、レベル2となる運転支援装置はすでに市販車に採用されているものの、これの過信による規制帯突っ込み事故が増加傾向にあるという。このように、自動運転にはまだ解決しなければならない問題が多くあるが、「Japan mobility Show 2025」でも2027年度にレベル4の実用化が明言されており、今後の発展に期待が寄せられている。塩尻市の実験が完全自動運転実現につながり、地域社会の維持・発展に資することを願ってやまない。
