一般的に、ガソリンスタンドはクルマに給油をする施設と認識されている。しかし、キャンプなどといったレジャーや災害時に備える発電機の燃料として、軽油を持ち帰る場合もある。ここで不思議なのが、ガソリンの持ち帰りは厳格に制限されているのに、なぜ軽油はそれほど厳しくないのかということだ。その理由は、同じ燃料でもその扱いに関するルールが大きく異なっているからなのである。

軽油もガソリンと同様、運搬や保管に使用できる容器については法律で厳しく定められている。基本的には、金属製の携行缶やドラム缶が推奨されているものの、プラスチック容器(ポリタンク)の使用も認められているのだ。もっとも、どんなポリタンクでも良いというわけではない。消防法が定める基準をクリアした、試験合格済みの製品であることが絶対条件になっている。

ホームセンターなどで「軽油用」として販売されているポリタンクは、一目で判別できるように「緑」に着色されていることが多い。これに対して、灯油用は「赤」で水用は「白・青」に着色されており、これらを代用することはできないのだ。たとえば灯油用の容器に軽油を入れた場合、変質や誤用による事故が発生しかねないのである。
容器の材質や形状によって、一度に運搬できる最大容量は以下の通りだ。
ドラム缶…最大250ℓまで
金属製ガソリン携行缶…最大60ℓまで
軽油用ポリタンク…最大30ℓまで
この制限は単なるマナーなどといったものではなく、法的な義務なのである。
容器についてここまで厳格な決まりがあるのは、軽油が消防法上の「第4類危険物(引火性液体)」に該当しているからだ。第4類の中で、軽油は「第2石油類」に分類される。これに対してガソリンは「第1石油類」であって、引火点がマイナス40℃以下と極めて低い。つまり、氷点下の環境であっても常に引火の危険がつきまとう「極めて危険な液体」なのだ。軽油の引火点は、21℃以上70℃未満。21℃未満の環境下では、火を近づけても即座に引火することはないため、ガソリンに比べれば相対的な危険度が低いといえる。

しかし、油断は禁物だ。夏場や直射日光の当たる車内などでは、軽油は容易に引火点を超える。ひとたび引火点に達すれば、火種によって爆発的に燃焼する危険性はガソリンと変わらない。指定された容器を使用し、フタを確実に閉める。そして「今、自分は危険物を運んでいる」という強い自覚を持つことが、ユーザーには求められるのだ。
軽油を運搬するにあたって、個人が日常的な用途で扱う範囲(20ℓのポリタンク数個程度)であれば大きな問題にはならないが、1000ℓを超えれば「指定数量」になるため、運搬する車両には特別な装備が必要となる。まず、車両の前後には「危」という標識を掲示しなければならない。さらに、万一の事態に備えた消火設備の積載が義務付けられているのだ。ほかにも、保管荷室の構造や材質などにも細かな規定が存在する。

軽油はガソリンよりも容器の選択肢が広く、一見すると扱いが容易に思えるかもしれない。しかし、その実態は確実な管理を要する「危険物」に他ならない。ポリタンクで購入する際は必ず「緑色の専用容器」を選び、容量制限を守る。そして、直射日光を避けた通気性の良い場所で保管する。こういった法の定めるルールを正しく理解し実践することが、軽油を安全に利用するための責務であるといえよう。
