「トラックごと電車に乗っちゃうの!?」と驚く、ドライバー不足を解決するアイデアとして今また注目が集まる、ちょっとユニークな「ピギーバック輸送」の舞台裏。
物流の世界で人手不足や環境問題が叫ばれるなか、解決策としてモーダルシフトという言葉を耳にすることが増えた。これはトラックによる長距離輸送を、大量輸送が可能な鉄道や船舶へと切り替える取り組みだ。その中で、かつて日本でも走り、いま再びそのコンセプトが注目されているユニークな輸送方式がある。それがピギーバック輸送だ。
ピギーバック(Piggyback)とは、英語で「おんぶ」を意味する言葉。物流においては、貨物を積んだトラックの荷台(トレーラー部分)、あるいはトラックそのものを丸ごと鉄道の貨車に載せて運ぶ方式を指す。ドライバーが長距離を運転する代わりに、列車にトラックをおんぶしてもらい、目的地の近くの駅まで線路の上を走るというわけだ。
載せ替えの手間をゼロに!コンテナ輸送にはないピギーバックならではの強み

一見すると、普通の鉄道コンテナ輸送と同じように思えるかもしれない。しかし、決定的な違いはその手軽さにある。通常のコンテナ輸送では、倉庫でコンテナに荷物を詰め、それをトラックで駅まで運び、巨大なクレーンを使って貨物列車へと載せ替える必要がある。
一方のピギーバック輸送は、トラックやトレーラーがそのまま貨車に乗り込む、あるいは荷台だけをスライドさせてドッキングする。つまり、駅での面倒な荷物の積み替え作業がほとんど発生しないのだ。発地から着地まで、同じ荷台に入ったまま移動できるため、荷痛みのリスクが少なく、パレットに乗らない特殊な形状の貨物でもそのまま運べるという大きなメリットがある。
なぜ日本の線路から姿を消した?「車格の壁」とバブル崩壊がもたらした衰退の歴史

実は日本でも、10トンクラスのトラックをそのまま載せるピギーバック輸送が1980年代から1990年代にかけて盛んに運行されていた。高速道路の渋滞緩和やドライバーの休息時間を確保する手段として大活躍したのだ。しかし、2000年前後を境に、日本の線路からその姿を消してしまうことになる。
衰退した最大の原因は、日本の鉄道ならではの「体格制限(建築限界)」にあった。日本の線路やトンネルは、欧米に比べてサイズが小さい。そのため、大柄な日本の10トントラックを貨車に載せると、トンネルの天井や架線にぶつかってしまう危険があった。これを避けるために床面を極限まで低くした特殊な貨車や、車高を落とした専用トラックを開発する必要があり、導入コストが跳ね上がってしまったのだ。さらにバブル崩壊後の運賃下落や、通常のコンテナ輸送の大型化が進んだことで、ピギーバックはその役割を一度終えることとなった。
2024年問題の救世主へ!トレーラーを活用した「令和版ピギーバック」への期待

しかし、時代は巡る。トラックドライバーの拘束時間規制が厳格化した2024年問題の到来により、長距離を1人で走り切る従来の物流は限界を迎えている。そこで今、トラックの「頭(トラクター)」と「お尻(トレーラー)」を切り離し、荷台であるトレーラー部分だけを鉄道やフェリーに載せて無人で運ぶセミトレーラーの共同配送が急速に見直されている。これは形を変えた、まさに令和版のピギーバック輸送と言える。
長距離の移動は鉄道に任せ、駅からのラストワンマイルは地元のドライバーが担当する。この役割分担ができれば、ドライバーは毎日家に帰ることができ、労働環境は劇的に改善する。さらに、CO2排出量もトラック単体で走るより大幅に削減できるため、環境対応を迫られる荷主企業にとってもメリットは大きい。
トラックの荷台が列車に揺られて旅をする。かつて「おんぶ」のスタイルで日本の大動脈を走った仕組みは、最新の物流ネットワークと組み合わさることで、これからの持続可能な物流を支える強力な知恵として、再び私たちの前に姿を現そうとしている。
(画像出典:Wikipedia・国土交通省)
