クルマ事情も「近くて遠い国」なのか? ホルムズ危機でEVが拡大中の韓国のクルマ事情

ホルムズ危機で原油価格が高騰するソウルを取材。主要都市で車両規制が始まる中、ヒョンデ・キア勢が市場を席巻し、EV普及も加速。一方で朝鮮戦争後の国産車展示からは自動車産業の歴史も垣間見える。

 アメリカとイランの戦争によるホルムズ海峡封鎖ですっかり原油価格が高止まりしている昨今、日本のお隣の韓国はソウルで交通事情をチェックしてみた。日本や韓国は世界的にみてもそれぞれ自国での自動車メーカーが数多く存在しており、国産車比率がどちらも高い。それゆえ、日本と韓国では隣国でありながらもその交通風景はかなり異なっている。ここ最近、日本ではすっかり軽自動車とSUVが増えたが、彼の国ではどんなクルマたちが走っているのだろうか。ソウル市内で感じたことをレポートしたい。

 ソウルのビジネス街へと向かうある平日朝の登り車線。日本の首都圏と同じように大渋滞が基本だ。ホルムズ危機の影響で2026年3月から韓国の主要都市では自動車のナンバー末尾による車両規制をスタートさせているが効果はいまひとつのようだ。

 この風景を見るとやはり日本とは大きな違いを感じる。かつては日本メーカー由来の古めかしい車輌が多かったが、現在は世界規模に成長した現代(ヒョンデ)自動車とその傘下の起亜(キア)だけで韓国シェア6割を超える(ヒョンデのハイブランド、ジェネシスを含む)。インポートメーカーのモデルを中心にSUVが増えつつあるが、やはり主流はバリバリ、セダンのままのようだ。残念ながら日本車を見かけることはかなり少ない。数年前の日本製品の不買運動が影響してか、2026年末の時点でホンダは同国からの撤退(2輪は別)を決めたこともあり、かなり劣勢のイメージだ。

 ソウル市内を走るタクシーはヒョンデとキアが多かった。高級セダンのK8というモデルがポピュラーなよう。タクシーは「ウーバー」などのネット手配の車両がかなり多く、数年前までの「流しのタクシー」はかなり拾いにくくなった。写真のタクシー室内にあるハングルの「赤い文字」が「空車」という表示で、従来どおり拾うことができる。パトカーもヒョンデだった。リアドアがボコボコのままなのは、韓国あるあるなのかもしれない。

 路線バスでもEVがチラホラ見かけることがあったが、乗用車ともなれば韓国産に限らずかなりEVモデルが普及している。ヒョンデもグローバルにEVを展開しているだけに韓国内でも多く見かける。写真の白いSUVがヒョンデのハイブランド(トヨタのレクサスに相当)である、ジェネシス。奥のシルバーのクルマはテスラのモデルY。いずれもナンバープレートがブルーなのはEVの証だ。車線の多い道路や高速道路などではEV優先の車線が用意されるほか、購入補助金も100万円超となるなど、さまざまな優遇措置が施行されている。

 ソウル市内から北朝鮮との境界にある、板門店へ向かう高速道路。写真はテスラのモデルYの室内から撮影したもの。特大のタッチパネル以外、スイッチ類は一切ない。パネルには地図のほか、左画面には自車と周囲の車両のアニメーションが随時表示されている。ナナメ後方から接近する他車の存在がミラーを見ずとも認識することができる。運転技量(安全確保)を経験で補うのではなく、多数のカメラで撮影して同時にわかりやすく表示する優れた技術だ。またフロントウインドウ越しに見える右路肩には有刺鉄線が延々と連なっている。そう、道路の右側が非武装地帯、いわゆるDMZとなるためだ。日本ではなかなか感じることのない、緊張感ある空間が続く。

 ホルムズ危機で車両制限を展開する韓国。彼の地での燃料はいくらなのか、ガソリンスタンドをチェックしてみた。2026年6月24日時点で、レギュラーが207円/L、軽油もほぼ同じ206円/L、プレミアムが249円/Lだった。ソウル駅そばの別のスタンドではさらにこれより1割くらい高い表示だった。今年の3月から1割から2割くらい高くなっているし、今後も高値が続くならばますますEVの比率が大きくなりそうだ。

ソウルにある国立近代博物館に展示されていた「韓国初の国産車」。朝鮮戦争の休止間もない1955年に作られた韓国初の国産車がこれだ。ほぼジープのノックダウンのようだ。室内には装備品などは皆無で軍用車といってもいいような存在だ。ちなみに韓国では朝鮮戦争とはいわず「南北戦争」という。

同じ国立近代博物館に展示されていたオート3輪。T-600という車名。1969年から1974年まで製造されていたモデルで、排気量は577cc、車両重量は520kg、最高速度は75km/hだった。

高速道路を走るヒョンデのサンタフェ。最新の5代目モデルのようだ。リアビューはミニバンのようにも見えるがサンタフェというネーミングゆえミドルサイズのSUVだ。

ソウルから地下鉄で1時間弱のエリアにある水原(スゥオン)。歴史的な「水原華城」があり、観光名所のひとつになっている。朝鮮時代に作られた城郭で1997年に世界遺産に登録されている。写真はその正門。城郭の長さは約5kmあり、周囲をトロッコ列車のような観光車両が走っている。

注)ガソリン価格は、1円=0.1ウオンで計算(2026年6月24日)

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