日本の東京にも増してソウルへの一極集中が課題となっている韓国。そんなソウルでのさまざまな移動手段や道路事情を探ってみた。
もしあなたが初めて韓国を訪れたとしたら、韓国の首都ソウルの道路事情は日本とは大きく違うことに驚くはずだ。韓国はアメリカと同じ右側通行なのはもちろん、その主要道路のサイズが大きいという違いがある。主要道路は基本的に片側4車線となっていて、上下合わせて8車線となる。

全8車線ある道路となればクルマにとってはいいものの、横断歩道をわたる子どもや高齢者にはなかなかシビアなロケーションだ。日本では信号のない横断歩道では車両よりも歩行者が優先だから手前で譲ってくれることが多いが、彼の国では違う。人よりもクルマが優先されているようでほぼどの車両も横断歩道手前で停止するクルマはなかった。旅行する際は注意が必要だ。そういえば、21世紀に入り大ブームとなった韓流TVドラマでは、ストーリーとして交通事故にあってしまうシーンがたびたび出てくるのを思い出した。「また交通事故という出来事を使って物語が大きく動かすのか」とやや違和感を覚えたが、意外やリアルなのかもしれない。
とはいえ近年では、かなり道路環境が整備されている。路線バスやEV専用車線の新設やセンターポール(上下線を区切るハードル)設置など、走りやすさや安全性もかなり改善されている。


地下鉄や路線バス同様、タクシーも運賃も日本に比べて安めに設定されている。海外からの観光客も多いことからソウル市内を走るタクシーの数はかなり多い。東京の中心地よりもかなり割合が高そう。そもそも料金が日本の半分くらいだから気軽に乗ろうというインセンティブもはたらくからだろう。そんなタクシーだが今回驚いたのはEV比率がかなり高いな、ということ。日本ではまだまだ3%程度の普及率だがソウルでは(タクシーも個人所有者も)EV率が高い。3割以上かな、という印象だった。また日本では、まだまだウーバーやグラブといった配車アプリによるサービスの普及は一部に留まるが、ソウルではかなり普及している。もちろん流しの車両もいるが、タクシーが多いソウルでもなかなか手をあげて拾うのはしにくかった(写真のルームミラー下の赤い電光表示が「空車」という意味)。

ソウルは日本でいえば仙台市と同じ緯度に位置する。冬の寒さの厳しさはいうにおよばずだが、近年では夏の暑さも(日本同様に)大きな問題となっている。そこで窮余の策として普及しつつあるのが、主要道路交差点のあちこちで見かけた歩行者向けのパラソル。なかなかのサイズで7〜8人は日陰に入ることができそう。パラソル形状なるもその支柱はセンターではなく、トラックのミラーのように屈曲している。それなりの風でも耐えらそうな強度がある。
主要道路から昔ながらの狭いに道に入ってみると、交差点の近くにはほぼかならず「カマボコ」が設置されている。路面が平らではないからバイクにせよ乗用車にせよ必ず減速しないと「それなりのショックとオツリ」に見舞われる。韓国のクルマは基本的にノーマルが多く、カスタムやチューニング車両はほぼ見かけることはなかった。地面スレスレのローダウン車両ではそもそも走破できないこととも関係あるのかもしれない。
渋滞激しいソウルでは、バイクと水上バスが必須!?

ソウル駅からクルマで20分くらいにある街「忠武路(チュンムロ)」を散策してみた。ソウル最大のバイク街として有名だ。日本でいえばかつての「上野のバイク街」という趣だろうか。小さい販売店や修理工場が文字通り軒を連ねていて、それなりの年齢層にとっては懐かしいというか親近感を覚える風景。そもそもソウルでは、走るバイクの9割以上がスクーターだった。いずれも移動やビジネス目的の車両がほとんど。日本のような趣味として楽しんでいるライダーは(ソウルでは)かなりの少数派だ。彼の地で販売されているバイクの銘柄は多種多様で日本のバイクメーカーもあるにはあるが、韓国メーカーのヒョーソンやデウォン、台湾のキムコが多いようだ。また店主に聞くと最近は中国メーカーのバイク販売数も増えている、とのこと。趣味より実用性重視だから、耐久性や価格の安さが求められているのだろう(写真の赤いコンパクトなスクーターは中国ホンダ製のEVバイク。販売価格は約20万円だった)。
また趣味性の高いバイクとなると多いのがアメリカンタイプ。そう、ハーレーが人気だ。ソウル市内にももちろんワインディングはあるものの、その路面の多くに例の「カマボコ」が用意されている。やはり楽しむなら日本よりも「道も広くまっすぐな郊外の道」となるからかもしれない。

ソウルの中心街を分断するように流れるのが、漢江(ハンガン)。韓国最大の流域面積を誇る河川であり、近年では多くの橋をライトアップしたりサイクリングロードを整備するなど、観光地としても注目されている。そんなソウルの中心地で昨年9月に運用が始まって間もない「ハンガンバス(水上バス)」に乗ってみた。パワーユニットには環境に配慮した電気モーターを採用し、約31kmにおよぶ航路を往復している。通勤・通学の足としての機能もあるが観光用としての機能も果たしている。
整備され広々とした主要道路と昔ながらの狭い裏路地。日本では地域としての再開発がなされるとエリア一帯が整備されたりするが、韓国では趣が異なる。日本の六本木や丸の内のような最先端のエリアも増えているが、そのすぐとなりには古くからの変わらない旧市街が混在している、という一面がある。そんなカオスな状態もまた韓国ソウルの魅力のひとつなのだろう。
