トラックの死角はAIが見る時代へ

ミリ波レーダーにカメラとAIが加わり、トラックの安全支援は大きく進化。死角の歩行者や自転車まで識別し、事故防止を支える技術へと変わっている。

ミリ波レーダーだけでは「何か」まで分からない

大型トラックにおける、事故を未然に防ぐ安全確認システムの進化が目覚ましい。これまで、車外環境の検知には長く「ミリ波レーダー」が使用されてきた。30GHz〜300GHz帯(波長1mm〜10mm)の電波を照射し、対象物との距離・相対速度・角度を割り出すこのシステムは、雨・雪・濃霧といった悪天候や暗闇のトンネル内でも高い精度を誇る。車内設備などで用いられる赤外線センサーは、直射日光や激しい温度変化に弱い。ゆえに、過酷な外気環境に晒されるトラックの車外検知には、極めて高い直進性と長距離検知能力を持つ、ミリ波レーダーが圧倒的に優位だったのだ。

しかし、ミリ波レーダーにも限界が存在する。電波の反射によって、「障害物が存在する」こと自体は確実に捕捉できる。しかし、それが「トラックの行手を阻む何者であるか」という、対象物の詳細な識別までは難しいのだ。とくに、小動物や小さな飛来物などについては検知漏れリスクが払拭できない。そのため、これまでは「前方・後方車両や側方障害物の有無を確認する」という、限定的な利用に留まっていたわけだ。

カメラの進化が死角を減らしていく

この弱点を補完し、大型トラックの安全性能を飛躍的に高めたのが、「カメラ」と「AI(人工知能)による映像解析技術」の融合である。車両の各所に配置された車載カメラは、それぞれ必要なエリアをカバー。その外観は空気抵抗や見た目にも配慮され、車体から突き出ないようなデザインになっている。

また、焦点距離を任意に変えられない車載センサーカメラの特性上、従来は設置部位ごとに異なるレンズを用意しなければならず、コスト面における負担が多きかった。しかし、最新技術では1枚の特殊加工レンズで近距離から遠距離まで、同時にカバーする革新的なモデルも実用化されているのだ。

AIが危険を見つけてドライバーに知らせる

そして、このシステムの真骨頂ともいえるのがAIの存在だ。車体が大きなトラックは、構造上どうしても広大な死角が発生する。前方直下・側方・後方などに潜む、歩行者・自転車・原付バイクなどの存在をカメラで捉え、AIが瞬時にグラフィックデータ化することで対象を特定。さらに進化した安全支援機能では路上標識の情報をAIが読み取り、ドライバーにリアルタイムで注意を促すことも可能なのだ。

後退時や発進時の支援においても、AIの果たす役割は大きい。従来のバックカメラシステムは、モニターに映し出された映像をドライバー自身が目視し、危険の有無を判断するものであった。この場合、長距離走行で疲労したドライバーが一瞬の見落としや目測の誤りをした場合、そのまま重大な人身事故へ直結する危うさを、抱えていたといっても過言ではない。

最新のAI解析システムなら進行方向の危険を自動で判定し、リスクを検知した瞬間に警告音やモニター表示で、ドライバーへダイレクトに通知する。人間の認知限界をテクノロジーで補完すれば、ドライバーの精神的・肉体的負担を大幅に軽減すると同時に、トラック事故の発生数減少につなげることができる。AIとカメラの連携が生み出す高度な安全ネットワークは、これからのトラック運送業界において不可欠なインフラとなるのだろう。

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