高速道路のカーブはなぜ傾いている?

高速道路のカーブにある路面の傾きは「カント」と呼ばれる。遠心力を抑えて車両を安定させるためのもので、安全な高速走行を支える重要な仕組みだ。

カーブの傾きがクルマの走りを助けている

日々、多くの車両が行き交う高速道路のカーブは意外とスムーズに通過することができる。ただ、カーブに差し掛かると路面が内側へ向かって傾いていることに、気づいたドライバーも多いのではないだろうか。これを、道路工学の用語では「カント(片勾配)」と呼ぶ。なぜこの傾きが必要なのか、そしてどのように設計されているのであろうか。

まず、クルマがカーブを曲がる際には物理法則として必ず「遠心力」が働く。これは、カーブの外側に向かって車体を押し出そうとする力だ。速度の2乗に比例して増大し、かつ車重が重いほど大きくなる。

たとえば総重量が20tを超えるような大型トラックが、高速でカーブに進入した場合に遠心力は凄まじい大きさとなる。もし路面が平坦であったなら、その巨大な外向きの力をタイヤと路面との間に生じる摩擦力だけで支えなければならない。これではタイヤへの負担が過酷になるだけではなく、雨天時など摩擦係数が低下した状態ではスリップや外側に横転を引き起こしてしまう。

綿密な計算で設計・施工されたカント

そこで、カントが必要になるのである。路面をカーブの内側に傾けることで、車両が持つ重力(荷重)の一部をカーブ内側に向かう力として作用させるのだ。外側へ飛び出そうとする遠心力と、内側へ引き込もうとする重力が相殺されることで、タイヤの摩擦力に依存する割合が減少する。結果として、大型トラックであってもスムーズかつ安全に旋回できるようになるのだ。

では、このカントはどのように設計・施工されているのだろうか。高速道路のカーブは、直線の後にいきなり一定の半径の円カーブが始まるわけではない。ドライバーがハンドルを一定の速度で徐々に切り込んでいく軌跡と一致する「クロソイド曲線」と呼ばれる緩和曲線が、直線と円カーブの間に挿入されている。

カントの傾斜もまた、この緩和曲線に合わせて緻密に計算され、直線部の平坦な状態から円カーブ部の最大傾斜へと徐々に付けられていく。施工時にはアスファルトフィニッシャーなどの重機を緻密に制御し、この滑らかなねじれ面を三次元的に造り上げているのだ。

トラックの特性も考慮した最適解

さらに、設計にはトラックの事情も大きく関わっている。トラックは、乗用車に比べて重心が高い。遠心力を打ち消すためだからといって傾斜をきつくしすぎると、今度は渋滞などで低速走行したときや停車した際に、内側へ向かって横転してしまう危険性が生ずる。

そのため、カントの角度は無制限に大きくすることはできず、日本の高速道路では最大でもおおむね6%〜10%程度の勾配に抑えられているのだ。道路の設計速度や想定される車両の重心高、路面の摩擦係数といった明確な物理的根拠に基づき、高速走行時の遠心力抑制と低速時の内側に対する横転防止という相反する条件を、クリアする「最適解」として計算されているのである。

普段、何気なく通過している高速道路のカーブ。そこには、速度・重力・遠心力などをコントロールし、トラックなど重量級の車両を安全に導く土木工学の叡智が詰まっている。次に高速道路のカーブを曲がる際は、巨体をふわりと受け止めてくれる路面の傾きにも意識を向けてみてはいかがだろうか。

PHOTO GALLERY

ページトップに戻る