乗用車ドライバーから見たパワーゲート付きトラック

平成25年式いすゞエルフパワーゲート付き。トラックドライバーからすれば、見慣れた小型トラックといったところであろうか。しかし、乗用車ドライバーからすれば大きなミニバンといった感覚になる。もっとも、ミニバンはボンネットがあってそこにエンジンが収まっているから、エンジンも前輪も運転席の前にある。

これに対して、トラックはキャブオーバー方式。エンジンも前輪も、お尻の下にある。目線は高くなるし、ハンドルを切るタイミングが異なってくる。全長が長いので、内輪差が大きくなる。乗用車とは、ずいぶん車両感覚・運転感覚が異なるのだ。しかも、今回取材した車両はマニュアル車。キャビンに入れば、足元にはペダルが3つ。当然のことだが、AT限定免許では運転できない。

乗用車との大きな違いは、キャビン後部の荷台である。架装によってその種類は様々だが、当該車両はパワーゲートが付いている箱バンだ。後部扉には、しっかりとロックがかかっている。この開け方が素人には難しい。まずロックを外してレバーを持ち上げ、45°程回転させれば連動してロッドのロックが解除できる。そうすると扉を開けられるようになるのだ。扉は荷台サイドまで大きく開くのだが、作業中に動かないようにストッパーをかけることができる。ただ、強風の際はこれを壊して扉が動く危険性があるために、使用には注意が必要だ。

パワーゲートは、主に荷台後部に付けられた荷物用簡易エレベーターである。重い荷物やかご車などを地面に下ろすときに重宝する。また、プラットホームとの渡り板としても使用可能だ。近年は無線リモコン仕様のものが増えたが、当該車両は有線タイプ。リアタイヤとパワーゲート本体の間に、リモコン収納ボックスがある。有線リモコンは別途に電源を必要とせず確実に作動するが、コードの範囲でしか使用することができない。

パワーゲートにもいくつかの種類があり、よく見かけるのは後部扉に張り付いているタイプ。この場合、1度パワーゲートを開かなければ、後部扉を開くことができない。当該車両に装着されているのは、折りたたんで車両の下に格納する仕様になっている。そのため、電動で後部にせり出させてから手動でゲート面を開く。ゲートの上がり下がりは、もちろん電動である。

わが国で使用されているほとんどのトラックには、ボンネットがなくエンジンは座席の下にあるから、メンテナンスはキャビンを持ち上げて行うキャブチルト方式になっている。これも、乗用車とは大きな違いだ。一部のワンボックスカーもキャブオーバー型だが、エンジンは前席座面を持ち上げることで露出できる。

車両前面下方を支点に、キャビンが回転するように持ち上がるのはなかなか圧巻である。ロックはキャビンと荷台の間にあり、それを外してから手動で動かすのだ。これにより、キャビンは大きく傾くので室内に置いてあるものには注意が必要である。この作業は、基本的に平坦な道路で行なわなければならない。なぜなら、坂道ではその方向によってキャビンを上げにくい、あるいは下げにくいなどといったことが起きるからだ。

キャビンに乗ると、そのスイッチ類や警告灯の多さに戸惑ってしまう。また、後方に直接視界がないことのほか、両サイドや前方直下などに死角が多いことは不安要素になる。全幅の広さや、全長がつかみにくいことも運転を難しくしている。乗用車ドライバーからすれば、トラックの運転・操作は簡単とはいえないのだ。やはり、トラックドライバーはまぎれもないプロだということなのだろう。

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