様々なパーツで飾られたトラック=「デコレーショントラック(通称:デコトラ)」という名称は、マニアでなくても広く一般的に認識されているだろう。では、「アートトラック」という名称もご存じだろうか? もしも知っているのなら、アナタも立派なマニアの一員だ。
よく聞く“デコトラ”というのは、プラモデル・玩具メーカーの青島文化教材社(以下、アオシマ)が所有する登録商標。誰もが一度は聞いたことがあるだろうが、その起点となったのは、1975年公開の映画『トラック野郎・御意見無用』(監督:鈴木則文、主演:菅原文太、愛川欽也)だ。公開直後から大ヒットし、その後全国的に「トラックを飾る」ことがブームとなった。“デコトラ”とは、そんな第一次デコトラブームに乗って、装飾トラックのプラモデルを商品化する際に、1976年(昭和51年)に作った造語「デコトラ爆走野郎」の「デコトラ」の部分が一般名詞化したものとされている。『トラック野郎』の公開時、配給元の東映は、アオシマと同時にバンダイにもプラモデル商品化の打診を行っており、やがて「トラック野郎」の版権・独占商品化権をバンダイのみに与えたため、アオシマが「デコトラ」の商標で商品展開を行うことになったからだ。
一方の“アートトラック”は、版権の使用許諾の煩わさから発生した名称だ。これは、1979年末公開の映画トラック野郎第10作で終了した数年後の、1984年4月に史上初となるデコトラ専門誌として芸文社から創刊された「カミオン」が使い始めたことで、読者に認知される名称となっていった。このカミオン創刊がキッカケで第二次デコトラブームとして再燃することになる。第一次デコトラブームが前世代的な和風な装飾だったこと。数年後の第二次デコトラブームには、装飾自体も近代的になったこともあり、どちらも『装飾したトラック』の名称ながらも“デコトラ”と“アートトラック”は微妙なニュアンスの違いがあるのだ。

さて、前置きが長くなったが、今回本題のトラックは『シルバーサタン』というニックネームが与えられている。前述の“アートトラック”を代表する1台だ。そもそも飾ったトラックにニックネームを付けるという文化は第一次デコトラブームよりも前から存在していたが、当時は『〇〇丸』といった「陸の船乗り」を連想させるものが多かった時代に、横文字でのネーミングは画期的だった。ちなみにこのシルバーサタンのベース車種は、1977年から84年まで販売された4代目のトヨタ ダイナ。40年以上も前のトラックがベースながら、40年以上も装飾を施し続ける、名実ともにアートトラック界のトップランナーなのだ。

なぜトップランナーと呼ばれるのか。それは登場時、画期的な装飾パーツを次々と発明し、それまでの“デコトラ”から、よりモダンでスタイリッシュな“アートトラック”へと近代化を果たした。その功績は大きい。以後、シルバーサタンを発端に、アートトラックたちの定番となったパーツは枚挙にいとまがないのだ。登場から40年以上経たいまでもトラックとしての機能を保ちつつ、そのスタイルは独創的に変化をし続けていることも驚異的と言える。トラックに興味がある・ないに関わらず、その姿をみた者は「これはいったいなんなんだ?」と驚くこと確実。なんとも前衛的な芸術作品のようなスタイルだ。そんなシルバーサタンのオーナーである内藤久幹氏は、トラックの装飾プロデュースだけではなく、実はカミオン創刊の糸口を作った人物でもある。第二次デコトラブームの陰の立役者であることはマニア諸氏には知られているのである。

そんなシルバーサタンとオーナーの内藤氏だが、近年はデコトラ&アートトラック関連のイベント参加を見送っている。それは「若い世代のアートトラックやドライバーに脚光を当てて欲しい」から、だという。その代わりに注力しているのが芸術系イベントへの支援参加だ。
- 2015年「デコ借景」(東京藝術大学)
- 2022年「太陽の前橋プロジェクト極光行脚」(前橋市)
- 2023年「中之条ビエンナーレ2023」(中之条町)
- 2024年「MUSIC LOVES ART 2024」(文化庁)
- 2025年「UI night」(中之条町)
と、年1回ペースで様々なアート系イベントの振興に協力。そして2026年は、京都で開催される「KG+」に参加する予定だ。KG+とは、これから活躍が期待される写真家やキュレーターの発掘と支援を目的に、2013年よりスタートした公募型アートフェスティバルで、2026年に14回目を迎える。京都から新たな才能を世界に送り出すことを目指し、意欲ある参加者を広く募集して展覧会を開催するという趣旨だ。また、KYOTO GRAPHIE京都国際写真祭との連携・同時開催を通して、KG+参加アーティストに、国内外のキュレーター(学芸員・専門管理職)やギャラリスト(美術商)らとの出会いの場と情報発信の機会を提供する催しだ。
4月18日から5月17日までは「京都場 KYOTO-ba」にて、シルバーサタンを6人のフォトグラファーが取り下ろした写真作品が展示される。さらに5月9日は「東本願寺お東さん広場」にシルバーサタンの現車が展示される。シルバーサタンが関西方面に遠征するのは極めてレアなこと。この機会に気鋭の写真家たちの作品や、古都とコラボするアートトラックのトップランナーぶりをその目に焼き付けてはどうだろう。

【イベント&関連情報】
EVENT INFORMATION 1
名称:「KG+ シルバーサタン写真展示」
場所::京都場 KYOTO-ba 京都府京都市中京区西ノ京南聖町6-5
期間:2026年4月18日〜5月17日 10:00-19:00(無休)
EVENT INFORMATION 2
名称:KG+ シルバーサタン実車展示
場所:東本願寺お東さん広場
期間:2026年5月9日 ※実車展示は、9日のみ。
BOOK INFORMATION
概要:CARTOPMOOKリアルトラックス特別編集
『小型車グラフィティ』2026年4月27日発売(交通タイムス社刊)
- 独占ロケにて撮影した最新のシルバーサタンを多数掲載
